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エッセイ「忘れえぬ言葉」は、CGBS代表者のセールスマンスピリットの涵養に最も影響を与えた、滝川精一氏の折々の言葉から構成しています。ご紹介する言葉の意義は、これらの言葉を集約した滝川精一氏の1990年代の著書(「起業家スピリット」「天職ざんまい」)等(以下「本書」と称す場合があります。これらの著書は完売のため入手できません。)から原文のまま引用させていただきました。
滝川精一氏は、「本書」執筆当時キヤノン販売株式会社社長、現在はキヤノンマーケティングジャパン株式会社特別顧問の他、多くの要職でご活躍中です。
■「映像と情報のシステム・インテグレーター」について(CGBS代表・高橋記)
複写機に代表されるOA機器がキヤノン販売の売上の主力であった当時、キヤノン販売の営業部門は映像事務機事業とシステム機器事業に二分され、両者の間には微妙な壁が存在したのも事実であった。この微妙な境界の壁を明確に打破したのが、滝川社長(当時)の提唱した「映像と情報のシステム・インテグレーター」構想である。
映像事務機事業の基幹製品であるデジタル・カラー・コピアのピクセルシリーズとシステム機器事業の花形のApple・ IBM・HP・DEC・SUN等のコンピュータをインテグレーションして販売するという、それまでのキヤノン販売では考えられなかったビジネスモデルが、堂々と罷り通ることになったのであった。
このビジネスモデルが大成功したことは申すまでもないが、二つの事業に在籍し、セールス・フロントにいた私には、時流に合致したトップの決断が持つ威力(社内的には「威光」かもしれなかったが)をまざまざと感じたものであった。もし、この構想のバックアップがなかったら、その後のキヤノン販売の革新はあり得なかったであろう。
-当ウェブサイトに掲載されている社名、商品名は、一般に各社の商標または登録商標です-
日系世界人はグローバルな起業活動の展開において、フェアでなければならない。私はアメリカでの生活のなかから、グローバル・マーケティングにはアウトとインがなければならないと考えるようになった。(中略)
この輸入事業の展開のなかから、システム・インテグレーションとシステム・グローバリゼーションという二つの事業コンセプトが生まれてきた。(中略)
しばしばアップルコンピュータ社やヒューレット・パッカード社を訪問して、こうした動き(サイト管理者注:1980年代中頃からアメリカの情報産業の中に生まれたシステム・インテグレーションという領域で起きてきたシステム・インテグレーターという新しい事業)を見たり聞いたりしてきた私は、C社(サイト管理者注:キヤノン株式会社)創業51周年に当たる1988年、わが社の第二の創業の中心となるビジョンとして、世界の情報産業のこの大きな流れに何とかしてついて行こうと決心した。(中略)
わが社は幸いなことにデジタル画像機器(サイト管理者注:デジタル・カラー・コピアのピクセルシリーズ、レーザー・ビーム・プリンタ、バブル・ジェット・プリンタ等)は豊富に持っている。これを最高度に生かして「映像と情報のシステム・インテグレーターをめざす」ことに腹を固めた。(本書P212〜P216より)
問題は必要なコンピュータ機器であるが、当時すでにわが社は自社パソコンの他に、アップルコンピュータ社の製品、ヒューレット・パッカード社の一部のコンピュータ、IBM社の一部のオフコンなどを販売していた。この流れを拡げて、輸入促進の時流に乗り、海外優秀メーカーのコンピュータ、ソフトウェアを輸入して、わが社の情報機器とシステム・インテグレーションして行こうという方向を考えた。
21世紀は世界統合市場の時代である。この経済のグローバリゼーションの潮流に乗って、わが社も海外の優秀な情報機器とわが社の優秀なデジタルOA機器をシステム化してグローバル・マーケティングのインの起業活動を進め、これをシステム・グローバリゼーションと呼ぶことに決めた。(中略)
こうして私は日系世界人の義務として、ギブ・アンド・テイクの原則に従い、グローバル・マーケティングのアウトの起業活動として、CUSA社(サイト管理者注:キヤノンUSA)を起こし、また、グローバル・マーケティングのインの起業活動として輸入事業とシステム・グローバリゼーションの事業を起こすことができ、世界の一員としていささかでも役に立てたのではないかと一人で納得している次第である。(本書P216〜P218より)
■「システム・グローバリゼーション」について(CGBS代表・高橋記)
海外優秀メーカーのコンピュータ、ソフトウェアを輸入して、キヤノンの情報機器とシステム・インテグレーションして行こうという方向が打ち出され、Apple・ IBM・HP・DEC・SUN等との契約が具体的に進展して行った事実は、カメラ屋あるいは複写機屋のコンピュータ・セールスとの周囲の冷たい視線の中で遠慮がちに商談を進めていた苦い体験を持つ私には、正しく望外の喜びであった。
これらの製品を直接販売するとか否とかに関係なく、国内コンピュータメーカーと対等以上に戦えるバックボーンを得たという強みは、システム・インテグレーションとは言っても、実態は周辺機器に注力せざるを得ないキヤノン販売にとって、どれほどの自信になったことであろうか。
滝川氏は、日系世界人の義務として、ギブ・アンド・テイクの原則に従い、グローバル・マーケティングのインの起業活動と「システム・グローバリゼーション」を位置づけているが、セールス・フロントにいた私には、誠にありがたい最新兵器のプレゼントであった.。
■「参考資料」について(CGBS代表・高橋記)
忘れえぬ言葉(3)並びに(4)が私に与えた衝撃と感動を具体的に示す資料として、当時の資料から
(1)キヤノン販売のコンピュータ販売提携一覧
(2)キヤノン販売第四次五カ年計画の総合ビジョンと企業コンセプト
を紹介します。(経済活動の変遷により現在はこの資料とは異なる場合があります。)
キヤノン販売第四次五カ年計画の総合ビジョンと企業コンセプト |
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総合ビジョン |
「マーケティングを面白くする一兆円企業キヤノン販売」をめざしその基礎を固める。 |
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企業コンセプト |
(1)限りなき創造と繁栄のために「映像と情報のシステム・インテグレーター」をめざす。 |
(2)価値多元化時代に対応する「キヤノン販売式顧客満足システム」の完成をめざす。 |
(3)輸入促進を積極的に展開し「システム・グローバリゼーション」をすすめる。 |
(4)「キヤノン販売式フリー・バカンス」の精神と利益あるマーケティング活動によって |
社員と家族の生活文化の向上をはかる。 |
(5)「2ウェイ・コミュニケーション」を徹底し全社員の知恵と力を結集する。 |
注1.滝川精一著「天職ざんまい」P270より |
注2.当該年度は1993年〜1997年 |
キヤノン販売のコンピュータ販売提携先 |
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提携年月 |
提携会社 |
提携商品 |
1983年10月 |
アップルコンピュータジャパン |
パソコン |
1985年04月 |
日本アイ・ビー・エム |
オフコン、ワークステーション |
1986年11月 |
ヒューレット・パッカード |
オフコン |
1989年06月 |
ネクスト・コンピュータ |
ワークステーション |
1990年05月 |
フローティング・ポイント・システム |
ミニ・スーパーコンピュータ |
1990年10月 |
日本ディジタルイクイップメント |
ミニ・コンピュータ |
1990年10月 |
日本サン・マイクロシステムズ |
ワークステーション |
1991年02月 |
クレイ・リサーチ |
スーパーコンピュータ |
注1.本書P221より転載 |
注2.販売提携先社名、商品名は全て本書刊行当時のものです |